11月5日の製品発表会をもって、ウェアラブルチェア『archelis(アルケリス)』は、製品として世に出ることとなりました。
私が想定していた期間の、何倍も開発に時間を要しましたが、私はその日、自信を持ってこの言葉を言うことができました。
「これが製品版のarchelisです」と。
archelisは、単に見ただけではその使用感を想像するのは、難しい製品です。
従来ある椅子とは違う、全く新しい感覚の製品なので、実際に体験してみないと、あの「座っている」が分かりません。
ですので、この一見では判断しがたい製品が、グッドデザイン2018・ベスト100、そしてその中から特別賞としてグッドフォーカス賞(中小企業庁長官賞)を受賞という、認知度も高く、名誉ある賞をいただけたことは、本当に価値のあることだと思っています。
私が自治医科大学の医師である川平先生(当時:千葉大学フロンティア医工学センター)の提案を伺い、身につけて歩ける椅子を実現化していくにあたって、千葉大学フロンティア医工学センターの工学博士である中村先生から、工学的な視点から試作品の改良にさまざまにアドバイスを伺い、開発が始まりました。
このarchelisが完成するまでの道のりの中で、一番大きな転機はデザイナー西村ひろあきさんが開発メンバーに加わったことだと思います。
既に中小製造業の仲間とのコラボ製品で、説得力のある面白い作品をいくつも発表していたデザイナーの西村さんでしたので、私もいつか一緒に製品を作ってみたいと考えていました。
開発を進めていくうち、「身体に装着するものだから、よりかっこよくしたい」という思いが強くなっていき、「それならば」と一も二もなく西村さんにお声掛けさせていただきました。
何度かの打合せの後、最初に上がって来たデザイン画を見た瞬間、そのスタイリッシュさに驚きました。
そのデザインが生まれた経緯を伺えば、なるほどと納得のいく、理論や法則に裏付けられたな機能的な美しさでした。
とは言え、それまでの試作機との差がかなりあるため、どう擦り合せていけばいいのか正直戸惑いましたが、それは私たちの求めていた“最終形”に飛躍的に近付いていたということには間違いありませんでした。
今度はデザイナーの意図を、私たち(千葉大学の医工連携/ニットー)が読み解く番となりました。まず試作4号機を制作し、それを踏まえ、形状をデザイン寄りにした5号機が生まれました。
archelisは、気持ちよく装着していただくことができ、使用中は楽で、なおかつ見た目がカッコいい。
それら全てを満たすため、そこから先は『フィット感』追求の日々でした。
納得のいくまで繰り返した試作は、14号機を数えることとなりました。
archelisは、現在外科医向けの製品としてレンタルを開始いたしましたが、立ち仕事が辛いと思っていらっしゃる作業者、全ての方の役に立つ可能性を持った製品です。
成熟型社会へ向かう現在のデザインの意味合いは大きく、形のあるものだけでなく多様に変わっていると、今回の受賞、また他の受賞作品を見て強く感じました。
特に、今回新設され3点しか選ばれることのなかった『グッドフォーカス賞』をいただくことができたというこというのは、未来への広がりをこの製品に感じていただけたからなのではないでしょうか。
私たちは、この期待や希望などを含んだ評価に応えるべく、邁進して行こうとワクワクしています。
これからも注目してください! 頑張ります!