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  • 魔改造、ブーブー旋風鬼が生まれるまで

    こんにちは。魔改造の夜 扇風機チーム 外装担当のヤスノです。

    はい! 今回も、「魔改造の夜」(NHK BSプレミアム)の裏話についてのブログです。

    前回、9月11日更新のブログ更新後、「扇風機チーム設計の天沼健太郎さんの話をもう少し深堀して欲しい」、とのご意見をいただきましたので、再びアルケリスの天沼さんに登場していただくことになりました。

     

    ――度々お時間いただき、ありがとうございます。改めて、今回の『扇風機50m走』、チームNットーが魔改造した「ブーブー旋風鬼」が生み出される経緯について、一緒に振り返っていきたいと思います。

    天沼「よろしくお願いします。」

    ――まず、“お題”が発表されたところからですが、天沼さんがからはどんな風に見えていたか伺えますか?

    天沼「扇風機が選ばれたことに関しては、想定の範囲内でしたが、レギュレーションの多さに戸惑いましたよね。どう解釈するかによって、全く違う完成形が正になり得ますから。実際、その解釈について、チームメンバー内で何度も話し合い、すり合わせていく必要がありました。」

    ――そうですね。TVでは全てを紹介されていませんでしたが、番組から出されたレギュレーションは何気に細かくて、自由度が少なく感じられましたよね。

    天沼「最初は、エンジンをかけた状態でスタンバイしていいと言われていたので、扇風機の操作パネルの部分にスイッチを付けていたんです。でも途中でそれが駄目という話になって。『スターターでエンジンをかけたら全部のプログラムが走りだすようにしてください』って言われて焦りました。たぶん、それが私にとって一番の難関でした。」

    ――途中途中で、我々のレギュレーション解釈に対してNG出されるのも、結構辛かったですよね。完成形が見えた後半で、工場長が『演出目的で、タイヤの横にフラッシュペーパー(手品などで使われる一瞬で燃える紙)を仕込んで、ゴール時に火を出そう!』って言って、みんなで盛り上がってたら、翌日、『火は駄目です』って言われたの、私は悲しかったなぁ。もし番組側がOKってなっていたら、プログラムを変えるだけで出来たんですか?

    天沼「それは無理。それ専用のセンサーを追加することになりますよ。」

    ――そうですよね~。他にも、天沼さん的に大変だったり、不安に思ったことを教えてもらえますか?

    天沼「重たいエンジンを、高い位置で横首振りさせる機構の耐久性と、転倒の不安ですかね。ひとつめの試作で上手くいったので、特に大幅な仕様変更はありませんでしたが。あとやっぱり、エンジンを駆動に使うと決まったこと自体ですよね。不安定なエンジンを制御できるのか? 使いこなせるのか?って。でもやるしかないから、前に進むのみでしたけど。

    ――エンジンを選んだことに関しては、もう、あらゆる人から、「よく選んだよね!」って言われますよね。同時に、「ロマンだね」とも言われますけど。

    天沼「悩んで、試行錯誤して、辛く苦しい日々でしたけど、みんな楽しそうでもありましたよ。特に松ちゃんがね。あれが見られて良かったなって思います。」

    ――言えてます(笑)。だから、私は前回のインタビューブログが書きたくなったんですよ。では次に、ブーブー旋風鬼の仕組みについて、素人の私にも解るよう、シンプルに説明してもらってもいいですか?

    天沼「(上の図を手書きしながら)だいたいこんな感じです。本当にシンプルにして、みんなで試行錯誤しやすい形にしました。ブレーキならスポンジの素材を選定したり、エンジンならスタートの機構とか。チームとして参加するなら、『やります!』って手を挙げた人、みんなが携われるものがいいですから。」

    ――そうですね。ブレーキと言えば、何人かの人に「ブーブー旋風鬼のブレーキは独特な形ですね」って言われましたが、どんな経緯であの形状が選ばれることになったんでしょう?

    天沼「ブレーキの形状には、他にも2種類の候補がありました。Sライズさんが採用していたコースの壁面に突っ張る方式、ディスクブレーキのように車輪をつまむ方式です。でも最終的にこの「本体の底、全面のパネルが下りて広い面積でお腹を擦って止める」という方式を選んだのは、広い面の方が何度もコースを走って汚れても、機能が低下しづらいのではと思ったからです。あと、先ほど話題に出しましたが、素材の選び甲斐があるんじゃないかな、と思ったからですね。始め、パネルが下りるだけで止まるかと思ったんですが、やってみるとパワー不足だったので、最終的にはバネを4つ入れて路面を押さえつける力を強化しました。」

    ――外からは全然見えないブレーキの機構ですが、色々試してあの形状になったんですね。ところで、この(私は可愛くないと思っている)タイヤは、どのようにして選ばれたんですか?

    天沼「このタイヤが選ばれた一番の理由は、動きの滑らかさなどではなく、摩擦が少ないことです。もしマシンがコース内を大きく蛇行してしまった場合、タイヤのグリップがいいと、最悪、コースの縁を乗り上げてコースアウトして、失格してしまうというリスクが避けられます。」

    ――なるほど。リスク回避は大切なんですね。

    天沼「そうです。こういった競技は、とにかくリスク回避が大切です。本番の第一試技のとき、スタンバイの時間にブーブー旋風鬼を往復させたのは、センサーがちゃんと作動するかを確認するためで、それは絶対に必要な行為なんですよ。そのお陰で、強烈なスタジオ照明でセンサーが誤作動を起こしてしまっていることに気付けました。」

    ――あの時は、このまま走ることも出来ずに、失格になってしまうのかとヒヤヒヤして、私も脂汗かきました。気付けて、その場で咄嗟の対応ができて本当によかったです。ロボコン歴7年の天沼さんの経験値のなせる業でした。助けられました。

    天沼「久しぶりにこういった現場に立って、本番に向かって詰めて、高まっていきながら、当時の習慣が蘇ってきましたね。」

    ――ここから私が担当していた外装の話をしていきたいんですが……。あの車長は、どのように導かれたんですか?

    天沼「ああ、それは単純に車高の2倍あれば安定するって話です。」

    ――なるほど。本当にシンプルな理由で、すぐに納得できました。でも、あの比率って、本当に可愛くないんですよね。「扇風機を車にしよう!」ってなったときに、可愛くかゴツくかに出来たらいいなって思っていたんですが、とにかく軽量化が最重要ということもあって、最終的に全て諦めざるを得なかったんです。

     

    天沼「可愛くって……。完成したブーブー旋風鬼は、十分可愛いと思いますけど。」

    ――もちろん可愛いことは可愛いんですよ。ネットでも『Nットーの愛され系扇風機』って評されていて、それはすごく嬉しかったです。でも、“可愛い車”ってくくりには入らない形状だと思うんですよね。そう言えば改造の最初の頃に、「走り出す時にライトとテールランプを点灯させたい」って言って、みんなに「重くなるから」って嫌がられたけど、2日前くらいになって天沼さんから、「ライトを点灯させるくらいならいいですよ」って言われて、「えっ、もう時間ないし、どんな影響があるか分からないし、シールでいいです」って言った気がします。

    天沼「そのくらいなら、大丈夫だったのに。でも、その判断で良かったと思います。」

    ――と言うことで、大慌てでブーブー旋風鬼の“顔”サンプルを作りました。せっかくなので、作ったサンプル6種類をここで紹介しようと思います。

    ――この顔が出来た後、なんだか物足りなさがあって、私がゼッケン付けたいなって。付けるならニットーの社用車ナンバー「210」だなってなったとき、天沼さんが「フォントはこれしかない!」って、鶴の一声でしたよね。あのゼッケンを貼った瞬間が、愛され系扇風機、ブーブー旋風鬼誕生の瞬間だった気がします。私の中では。

    天沼「魔改造参加メンバー、ひとりひとりの力を結集して完成させましたよね。本番当日は、清々しい気持ちで臨めました。試技のあと、対戦相手の設計の方々とお話しさせていただいて話題に出たんですが、『魔改造の夜』への参戦は、もう一度ものづくりの原点や、作ることのワクワク感や挑戦について、再認識しました。ものづくりって、やっぱり最高だな、と。本当に本当に大変な1ヶ月半でしたが、機会があればまたチャレンジしたいです。」

    ――魔改造には、確かにそういう魔力ありますよね。天沼さん、忙しいのに長々お話に付き合っていただき、ありがとうございました。

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